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東京高等裁判所 昭和49年(ネ)2568号 判決

控訴人

富士開発株式会社

右代表者

玉田満

右訴訟代理人

吉野森三

ほか一名

被控訴人

折原半田共有林組合

右代表者

山田伊平太

右訴訟代理人

飯野春正

ほか二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所も原審の判断を正当とするものであつて、次のとおり付加訂正する外は、原告を控訴人、被告を被控訴人とよみかえて原判決理由欄の記載(判決七枚目表三行目まで)を引用する。

(1)  原判決三枚目裏一行目を次のとおりに改める。〈中略〉

(14) 同六枚目表六行目以下同七枚目表三行目までを次のとおり改める。

「(二)ところで、数量指示売買としての土地売買とは、売買目的物件が一定の実面積を有すべきことを現わす趣旨において売主がその面積を表示し、かつ、この面積を基礎とし、これに応じて売買代金が合意、決定された場合をいうものと解するのが相当である。ところが本件においては、売買契約書に目的物件各筆につき登記簿の記載どおりの地積が表示され、その合計額が、控訴人が本訴において指示数量と主張する地積額にあたることは前述のとおりであるが、右述のように、被控訴人側は、本件売買契約締結当時目的物件の実測面積を把握していなかつたのであるから、目的物件の面積が登記簿の記載どおり実存すべきことを確言し、そのことを現わす趣旨において契約書に登記簿どおりの地積を表示したとは考え難い(控訴人代表者の供述中この認定に反する部分は採用しがたい。)。他方、買主である控訴人側においても、買受の目的が投機売買にあつたこと、売買契約書作成の日までに目的物件の実測面積と公簿面積との差をとくに問題とした形跡がなく、契約書の調印に際しても、実測面積はもとより、前記図面に表示された地積すらこれを表示すべきことを要求した事実がなかつたこと、などから考えれば、売買目的物件の地積が登記簿の記載どおり実存すべきことを前提として契約を締結したとは考えられない。もつとも、前認定の事実によれば、控訴人は、買い値の提言にあたつて、反当りの単価と登記簿に記載された反別面積を基礎として、申出価額を算定したことがうかがわれるが、これだけでただちに、控訴人と被控訴人との間で、本件土地の面積が登記簿の記載どおり実存すべきことを前提として、その面積に応じて売買代金が合意、決定されたとはいいがたい。以上の諸点その他前認定の一切の事情を考え合わせれば、本件売買契約においては、売買目的物件が一定の実面積を有すべきことを現わす趣旨において売主がその面積を表示し、かつ、この面積を基礎とし、これに応じて売買代金が合意、決定されたものとは認められず、売買契約書に目的物件各筆につき登記簿の記載どおりの地積が表示されたのは、各物件の地番、地目等の表示とあいまつて、目的物件を特定する趣旨から出たものと認めざるをえない。従つて、本件土地売買は、民法第五六五条にいう数量指示の売買にあたらないと認めるのが相当であるから、控訴人の本訴請求は失当であり、これと同旨の原判決は正当である。」《以下、省略》

(白石健三 小林哲郎 間中彦次)

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